ある大手自動車メーカーの営業企画部課長は、いまでは珍しい名前の「山田平太郎」です、彼は部下からの信頼が厚い人物です、「何事にも失敗を恐れず考えて挑戦しろ、失敗は人を成長させる、」が口癖です。その部下の、「大内君」は、とても謙虚で爽やかな若者です、ただいま、グローバル時代に相応しいエリート教育中です。
AMRI研究員の経済解説
大内君
今日のテーマは?
山田課長
今日は、「スナイパー(Sniper))だ、長距離から確実に敵を狙撃するプロ「狙撃手」だ。アメリカのアクション映画に、「山猫は眠らない」があった。記憶にあるのは、南米パナマ、コロンビア国境近くのジャングルで、ワシントンからの指令を受け、極秘のうちに任務を遂行する狙撃手トーマスベケット上級曹長の活躍を描いたストーリーだった。腕のいい「スナイパー」は、900mではまず外さず、1300mでも射止めると言われているよ。
大内君
「スナイパー」とは、まるで「ゴルゴ13」ですね。しかし、暗殺とは穏やかではないですね。
山田課長
いやいや、金融経済での話だよ。いまの世の中は、生き残りをかけて勝つか負けるかのゼロサム戦争が続いている、その戦場で「金融スナイパー」たちが戦っているのだよ。彼らは、「ヘッジファンド」に属して、ある時は「一匹狼」であったり、「軍団的」であったりして行動している。しかも24時間眠らないで獲物を狙うのだ。最近では、オイル価格が100ドルから26ドルまで暴落し、ドルは2015年6月の125円から110円まで、あっという間に円高が進行したよ。
大内君
主戦場となる闇夜の「ジャングル」はどこですか?
山田課長
日本市場は、朝の9時から3時まで開いているけど、世界はいつも眠らない。だから、「スナイパー」は、日本時間の真夜中が主戦場なのだよ。いまの季節だと、「ニューヨーク市場」は日本時間の午後10時から朝の5時までが活躍時間だよ。
大内君
さきほどの「ヘッジファンド」とは?
山田課長
「レバレッジ( leverage)」を効かせた大量の資金であらゆる商品を相手に「絶対リターン」を追求する組織だよ。「絶対リターン」とは、絶対に損はださないことだ。「デリバティブ(Derivative)」は聞いたことがあるだろ、いわゆる「金融派生商品」というものだ。例えば、「株式」は「現物」だけど、現物から派生した商品には「先物」とか「オプション」などがある。それが「デリバティブ」と呼ばれている。それらの商品は、証拠金の数倍から数十倍の取引ができるのだ、それが「レバレッジ(leverage)」なのさ。彼らの、主なターゲットは「円」だよ。「リスク・オン(Risk on)」で「円売りでドル高」、「リスク・オフ(Risk off)」で「円買いでドル安」を仕掛けているのさ。リスクを取りにいくのが銃の引き金の「on」なのさ、回避するのが「off」となるよ。
大内君
素朴な質問ですが「円高」とは?
山田課長
1ドルが100円のときだと、10万円は1000ドルの交換される、しかし、ドルが120円となれば、833ドルしか手に入らない。100円のときより167ドルも減ったことになる。これが「ドル高円安」だよ。反対に、ドルが80円となれば、1250ドルが手に入る、250ドルも円の価値が上がったことになる。これが「ドル安円高」なのさ。
大内君
しかし、日本の国債は危ないと言われて「格付け」も低いようですが、「安全資産である円が買われて円高に…」とは、なぜ円が安全資産なのですか。
山田課長
いい質問だね。安全資産とは一言でいえば、「リスクが少ない資産」のことだ。確かに、アメリカの格付け会社S&Pは、日本の格付けを「A」に引き下げた。これは「アイルランド」や「イスラエル」と同等で、中国や韓国より低いものだよ。だけど、日本は、世界で最も多くの対外資産を持つ債権大国だ。少し古いけど14年末時点で、366兆円は世界一なのだ。次いで中国が214兆円、ドイツ155兆円の順だ。またアメリカ国債への投資では中国と1位、2位を競うほど断トツに保有している、もしも日本がアメリカ国債を処分したらアメリカの経済も揺らいでしまう。だから、世界に経済危機が起きると、「スナイパー」に狙われて「リスク・オフ」の、円高が発生すると理解しているよ。日本が絶対破綻しないということはないけど、他国と比べれば安全なのは確かだというわけだ。