ある大手自動車メーカーの営業企画部課長の名前は、「山田平太郎」です、「平太郎」とは、時代がかった名前の持ち主ですが、東大出のエリート課長です。しかし、東大を出たからと言ってガチガチの堅物ではなく、部下からは好かれるタイプです。テレビドラマ「半沢直樹」に続いて人気化した、あの「下町ロケット」の「佃製作所社長」を演じた「阿部寛」を想像してください。そんなタイプです。そこに配属された新人が「大内進」です。早稲田大学を出たばかりの青年ですが、謙虚で爽やかな、いま人気の「窪田正孝」に似た風貌の持ち主でもあります。この「経済シリーズ」では、「山田課長」が「大内社員」に経済の動きを通じて教育していくものです。第1回目の今回は、「優秀な営業マンとは」、です。
AMRI研究員の経済解説
山田課長
昔の歌に「浪花節だよ、人生は」というものがあったけど、日本の文化は、「義理と人情、浪花節」だと言われている。朝早くからゴルフの接待をして、夜は銀座や六本木で接待、そして、弔問にはかならず顔を出す、これが、一流の営業マンだと言われた時代があったものだよ。
大内君
私はお酒もゴルフも大好きです。
山田課長
しかし、それは遠い昔の話であって、いまの時代に、そんな接待攻勢だけでは成功しないよ。「下町のロケット」で、「小泉孝太郎」が演じたNASA出身の技術者で、サヤマ製作所の椎名社長が、頻繁に接待するシーンがあったけど、成功しなかったね、現実にはあり得ないものだ、まずは、製品の知識はもちろん、世の中の仕組みである「経済」にいても興味を持つことだよ。酒もゴルフも10年早い
大内君
よろしくご指導をお願いします。
山田課長
いまの給与は自分に相応しいと思いますか? 大内君は5年後にいくら給料が欲しいですか?
大内君
うーん、分かりませんけど、まずは500万円が欲しいかな・・・。
山田課長
どこの会社も無価値なものにお金は払わない、自分自信を磨いて価値を高めて欲しい。サラリーマンの勝負は30歳代で決まってしまう、急がないといけない。
大内君
同期には負けたくないです。
山田課長
頑張ってくれ、例えば、ある企業にとても優秀なセールスマンがいたとするよ、彼は毎年5000万円稼いでくれたら、その企業にとってはとても価値ある存在だと言えるね。「下町のロケット」にもあったけど、ライバル企業から引き抜きにあえば支度金として1億円を用意するかもしれない。将来にわたり5000万円稼ぎ出す力あれば、それが自分の価値なのだ。
大内君
何も価値がないと評価されたら寂しいです。
山田課長
そのための、勝ち組になるための3カ条は、英語、パソコン、統計学の知識だよ。その3つの知識を完備して戦えば年収1000万円も夢ではないかもしれない、「大内君」は、大学時代に英語力とパソコンの知識を習得したので自信があると言ったけど、これからは社会の仕組みとなる「経済の知識」の理解が求められるね。
大内君
同期入社のライバルに勝つためには何から始めたらいいでしょうか?
山田課長
そのためには、毎朝「日経新聞」をしっかりと読むことが大事だよ。「日経平均が急落」、「原油価格暴落」などが一面に載ることがあるでしょう、私たち日常生活でもガソリン価格やバターの不足など無意識のうちにニュースを見聞きしているものだよ。
大内君
はい、分かりました。早速、「日経新聞」を読むことにします。
山田課長
先ほども言ったけど、接待よりも、自分というものに価値を付けることが大事なのだよ。例えば取引先から、いまの景気について聞かれて何もコメントできなければ、「こいつは大丈夫なのか?」と思われてしまうよ。「昨日はずいぶんと日経平均が下がったけどなんで?」、「このドル高はいつまで続きそうかね」、などは、大手だけでなく中小企業にとって、とても関心が高いものだ、「大内君」なりに整理して応えられることが信頼されるのだよ。
大内君
はい。
山田課長
経済を理解するまえに抑えておきたいのが、基本となる統計学の理解だ。経済部出身で数学が苦手な「大内君」にとって統計学は 難しい学問のようだが、知っておくことでセールス力に格段の説得力が生まれるのだよ。ただ、すでに学生時代に「偏差値」で馴染んでいると思うけどね、
大内君
予備校では苦労しました。
山田課長
基礎的な知識は次の3点だ、「平均値」、「標準偏差」、「相関係数」だ、なかでも「平均値」は単純そうで、なかなか奥が深いので、一度じっくりと学んでおくといいね。この世の中の数字は、すべてが平均値で占められているからね。例えば、「平均気温」、「平均所得」、「平均年齢」、「平均速度」などなどだ。「平均所得」では、とても高額の所得がある人がいれば、「自分は平均に比べてずいぶんと少ないな」、と錯覚してしまうよね。そこで「中央値」とは何かと疑問が生まれることになるものだよ。
大内君
分かりました。
山田課長
初めて聞いて難しいかもしれないけど、押さえておきたい経済指標があるよ、例えば、景気に関する指標では、GDP、鉱工業生産指数、金利に関する指標(政策金利、10年もの国債利回り)、雇用に関する指標も大事だね、米国では雇用統計がもっとも重要だと言われているよ、また物価に関する指標では物価上昇率があるね、そして貿易に関する指標、株価に関する指標も大事、日経平均指数、TOPIXについても知っておくことだよ、日本の経済は米国経済とはとても密接だから米国の経済指標も知らないといけない。例えば、いま原油価格が暴落しているけどWTI原油先物とか、GDP、米連邦公開市場委員会(FOMC)、雇用統計、小売売上高、消費者物価指数(CPI)なんかがあるよ。
大内君
学生時代に学んだものが多いですが、現実にはまったく気にしていないものばかりです。
山田課長
今日はいきなりで難しかったかもしれないけど、いまのグローバル時代は、日本だけでなく世界の動きにも注意しなければならないのだ、2015年の夏には「中国ショック」が起きて、世界中の株価が暴落したことがあったよ、どんなことにも興味を持って調べていくことが大事なのだよ。この「経済シリーズ」はこの後も続けていくことにしましょう。