ある大手自動車メーカーの営業企画部課長「山田平太郎」は、部下の信頼が厚い人物です、新しく配属された、「大内君」は、とても謙虚で爽やかな若者です、いま「大内君」に経済の動きと知識を特訓しています。2016年の金融市場は、世界手に大波乱でスタートしました。そこで今回は、「アメリカ経済と市場」です。

AMRI研究員の経済解説

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大内君
課長、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今朝のニュースでは日経平均が急落したとありましたが、何があったのでしょうか。
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山田課長
よく気が付いたね、いい質ものだ。株価は景気の先行指数なのだ、景気を映した鏡でもありとても重要だ。したがって、毎日の株価の動きを知ることだよ。新年最初の急落は、中国の「製造業購買担当者景気指数(PMI)」が節目の50を引き続き下回ったことがきっかけだったようだ。また、世界の火薬庫と呼ばれる中東で、サウジアラビアがイランとの国交を断絶したこともマイナスに働いたようだね。この「製造業購買担当者景気指数(PMI)」については勉強しておいた方がいいね。
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大内君
日本市場なのに、中国経済や中東情勢がそんなに影響しているとは驚きます。
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山田課長
どんな経済指標よりも、日経平均指数や、ニューヨーク市場のダウ平均指数が、とても大事だ。経済指標は、すでに過去の統計だけど、株価は将来を織り込むからね。
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大内君
しかし、なぜ株価はそんなに動くのでしょうか?
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山田課長
株式には元本保証がないので、その価値を評価するのがとても難しい。例えば、13億人もの人口を抱える中国の景気が悪くなれば、100万台も売っている、ホンダも無事ではいられない、またコマツの建設機械も同じだね、資源国でも、石油や鉄鉱石も、買ってもらう量が減ってしまう。また、中東で紛争が起これば、世界の経済活動がぎくしゃくして貿易量が落ちてしまう、やはり株価にとってはマイナスだ。このように株価はニュースにとても感応度が高い。株式の価値は、「企業が将来にわたり稼ぐ力」を評価したものだと言われている、だから、将来の稼ぐ力に変化があれば、株価も動くことになる。ただ、理論的に計算した理論株価いうものがあって、企業の純資産まで下がれば、ブレーキがかかるようだね。
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大内君
経済を知るには毎日の日本市場を見ておくことですね。
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山田課長
いやいや、それは違うよ、世界の経済と金融市場をリードしているのは、やっぱり「アメリカ」だよ。「ニューヨーク市(New York City)マンハッタン」に位置する細い「ウォール街(Wall Street)」が、世界経済を映した発信地だ。だから、毎朝6時に閉じる、NY市場の動きに一喜一憂しているのだよ。
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大内君
そうですか。だからお客さんも、「NYダウ」について聞いてくるのですね。
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山田課長
「NYダウ(Dow Jones Industrial Average)」の意味は、しっかりと押さえておかないとね。正式には、「ニューヨークダウ工業株30種平均指数」と「工業(industrial)」とついているけど、実際には鉄道と公共事業以外の会社であれば、全ての会社が対象となっている。採用企業には、「Apple(アップル)」、「American Express(アメリカン・エキスプレス)」、「Boeing(ボーイング)」、「Caterpillar(キャタピラー)」、「Cisco Systems(シスコシステムズ)」、「Chevron(シェブロン)」、「EI DuPont de Nemours & Co.(デュポン)」、「The Walt Disney(ウォルト・ディズニー)」など世界的に知られた会社ばかりだよ。
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大内君
どの会社も有名なところばかりですね。なんで「ダウ」と呼ばれるのですか?
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山田課長
ビジネス紙「The Wall Street Journal」は知っているかな、その発行元である「ダウ・ジョーンズ(Dow Jones & Company)」が算出しているからだよ、アメリカを代表する優良30企業を選出しているけど、過去を振り返れば、時代、時代に合わせて、代表企業に入れ替えられているのだ。
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大内君
よく分かりました。
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山田課長
その株価は、毎日、発表される経済指標に素直に反応しているよ、もっとも敏感なのが、「雇用統計」だ、失業率と並んで最も注目される指標が、非農業部門に属する就業者数だよ。毎月初めに発表されるけど、経済政策変更のきっかけとなる事が多いのでとても重要だ。もちろん、他にも、「小売売上高」、「鉱工業生産」、「中古住宅販売数」、「耐久財受注」、「消費者物価指数」、「貿易収支」、「ISM製造業景況指数」などが多々ある、面白いのは「ミシガン大学消費者信頼感指数」など、大学が調査しものが注目されているので、どんなものかこの際に勉強しておくといいよ。
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大内君
最近は、株価だけでなく原油価格もニュースで聞くようになりました、景気と関係しているのでしょうか。
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山田課長
「大いに関係があるので押さえておきたいね。このところのニュースでは「今日は1バレル36ドルでした」といった報道が続いているね。そこで言う、「1バレル(barrel)」とは約160リットル弱だ。昔、アメリカで、原油を樽で運搬していた名残のようだね。1バレルが、お腹の膨らんだ、あの一般的な酒樽1つ分の量となっているようだよ。
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大内君
そういうことですか。
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山田課長
そこで知っておいてほしいのが、「WTI(West Texas Intermediate)」だ、WTIとは 、テキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される超軽質原油で、硫黄分が少なくガソリンを多く取り出せる高品質な原油だ。その「WTI」の先物価格が「ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)」で取引されている。これが、世界経済の動向を占う重要な経済指標だから大事だよ。原油には、WTIの他に、欧州産の北海ブレント、中東産のドバイがあり、これらが世界の3大原油指標と呼ばれている。
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大内君
ガソリン価格が下がって我々には有難いですが、困っている国もあるのでしょうね。
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山田課長
原油の質が悪いものでは、すでに20ドル台まで下げているようだ、これでは、世界の原油生産の3分の1以上で採算が取れないと言われている。産油国の原油価格均衡ラインは2種類あるようだ、ロシアや中東各国の財政は石油に依存しており、1バレル=100ドル前後でないと財政が均衡しないと言われている。一方の、サウジアラビアでは原油価格が10ドルとなっても利益が出ると言われているよ。
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大内君
このままですと世界経済が混乱しますね。
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山田課長
有名な、「ゴールドマンサックス」は2016年の原油価格を20ドル台と予想していた。そうなれば日本も無傷ではいられない。どこかの産油国で破綻すれば、当然ながら損失によって生じた穴埋めのため株式も売られやすくなるし、「リスクオフ(Risk Off)」として、安全資産と見られている円は買われやすくなり、円高にもつながっていくよ。わが社にとっても為替の動向は、とても重要だからね。
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大内君
今日はありがとうございました。このあと復習しておきます。