ある大手自動車メーカーの営業企画部課長は、いまでは珍しい名前の「山田平太郎」です、彼は部下からの信頼が厚い人物です、「何事にも失敗を恐れず考えて挑戦しろ、失敗は人を成長させる、」が口癖です。その部下の、「大内君」は、とても謙虚で爽やかな若者です、ただいま、グローバル時代に相応しいエリート教育中です。

AMRI研究員の経済解説

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大内君
今日も「映画」の話ですか?
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山田課長
今日はちょっと古いよ。1953年制作のフランス映画に「恐怖の報酬 」というのがあった。ストーリーは、南米の油田で発生した火災を消火するため、トラックでニトログリセリンを運ぶ4人の男を描いたサスペンス映画だった。安全装置のないトラックでニトロを運ぶのは命がけ、彼らは、一攫千金を夢見て危険な仕事に挑むというものだった。
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大内君
「恐怖の報酬 」ですか、命がけの仕事に見合った報酬の計算は難しいですね。
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山田課長
私は、「恐怖の報酬 」とは「リスクを取った見返り」だと理解している。「報酬」ではないけど、長い人生においては、恐怖と向かい合って決断しないといけないことがあるものだ。例えば、住宅を買うとした時でも、「果たして、いまの会社が潰れないか、最後までローン返済に行き詰らないか」と迷うものだ、また株式投資にしても、「万一暴落したらどうしようか」、など、恐怖を前に躊躇するものだよ。
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大内君
そうですね、しかし、「失敗を恐れたら得るものもない」といいますね。
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山田課長
その通りだ。私の友人に資産運用会社で「ファンドマネージャー(Fund manager)」をしているものがいるよ。「ファンドマネージャー」とは、投資のプロのことだけど、毎日が「恐怖」との戦いだというよ。一日で髪の毛が真っ白になるほどの恐怖もあったそうだ。だから報酬も高いのだろうけど、報酬は成功報酬なので、必死なのさ。その彼に聞いた、日々の一幕はこんな感じだった。生々しい経済の生まれ方が分かるので勉強してほしい。

毎月第1金曜日、日本時間の午後9時半に発表されるアメリカの雇用統計は、世界経済にもっとも影響する経済指数だと言われています。次回は、4月1日に発表されます。発表される統計数値では「非農業部門雇用者数」と「失業率」の2つの項目が特に重要です、そして「平均時給」も注目されます。今回3月の非農業部門雇用者数のコンセンサス予想は20万8000人です。労働市場の実態を反映するのが、この「非農業部門雇用者数」です、現在、雇用情勢を悪化させないためには約15万人が必要だとされています、さらに失業率を上昇させないためには約20万人が必要だとされます。今回、失業率のコンセンサス予想は4.9%です。「失業率」は5.2%-5.5%が適正水準だとされています、失業率5.0%を下回る水準は「完全雇用」に近いと見られています。
××年×日の、ある「トレーデッイング・ルーム」の一コマです。
日本時間9時30分ピタリにモニター画面に。「非農業部門雇用者数」、「失業率」が映し出されました。「労働省が発表した×月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が29万2000人増と、市場予想の20万人増を上回る大幅な伸びとなった」とありました。
「オォーこれはすごい! 予想以上に強いな」
「やぁドルが買われているぞ!」
「シカゴの日経平均先物もドル高で上げてきたぞ!」
「だけど、NYダウは下がってきた、やはりドル高が影響したのか?」
「うーん、前もってドルを買っておいて正解だったな!」
「シカゴ日経平均先物が高いので、明日の日本も高そうだな!」
「あぁ、今回は事前にドルとシカゴ日経平均先物にポジションを取っておいて成功した、よかった!」
堅調な雇用数が堅調だったことで、金利引き上げが連想されて、すかさず、「ドルが急騰」、したものです。株価は、ドル高により企業業績には悪影響を及ぼすとして下げました。このように、雇用統計の影響力は抜群です。したがって「ファンドマネージャー(Fund manager)」は、「恐怖」を覚えながらも、「儲けのチャンス」とばかりに、事前にポジションをとっています。結果次第では、大きく儲けることになりますが、損をすることにもなります、まさに「恐怖の報酬」なのです。