ある大手自動車メーカーの営業企画部課長は、いまでは珍しい名前の「山田平太郎」です、彼は部下からの信頼が厚い人物です、「何事にも失敗を恐れず考えて挑戦しろ、失敗は人を成長させる、」が口癖です。その部下の、「大内君」は、とても謙虚で爽やかな若者です、ただいま、グローバル時代に相応しいエリート教育中です。
AMRI研究員の経済解説
大内君
今日も「映画」の話からですか?
山田課長
今日もちょっと古い映画だよ。1939年に公開された「風と共に去りぬ」、原題は「Gone with the Wind」だ、舞台は奴隷制が残る1860年代のアメリカ南部・ジョージア州での、「スカーレット・オハラ」という女性の半生を描いた作品だ。そのラストシーンでの台詞「Tomorrow is another day」がとても有名なのさ。このセリフ、日本では「明日は明日の風が吹く」みたいだけど、明日という日がある」という訳もあるそうだ。「ケセラセラ」、「なるようになる、先のことなど解らない」ことだよ。
大内君
昔過ぎてまったく知りません、だけど、「風と共に去りぬ」、「Tomorrow is another day」とは、「センチメンタル(sentimental)」な響きですね。
山田課長
幸福は長くは続かない、けど挫けないことだね。「挫けずに努力すれば、いつか良い日が来る」ということだと思うね。「The Beatles」の歌にも「let it be 」、「なるようになるさとか」、と「坂本九」の歌には「明日があるさ」があったよ。
大内君
ところで今朝の経済テーマは何ですか?
山田課長
「Tomorrow is another day」、景気の先行きは分からないけど、何とかヒントを掴もうとした統計の話だよ。これは「景気先行指数」と呼ばれているものだ。前回の14回では、アメリカの「雇用統計」について解説したけど、景気が良くなり始めると企業が雇用を増やすため、「新規求人数」を増やす、それは景気に先行して動くので先行指数だといえるね。雇用統計は、とても重要なものだから統計のなかの「横綱クラス」だ、だけどその他にも「横綱クラス」があるのだ。それは、アメリカの「ISM製造業景気指数」と言う統計だよ。
大内君
あまり馴染のない統計ですね。
山田課長
そうだろうね、世界が大騒ぎする雇用統計が知られているからね。雇用統計の結果によって、ドル円も株価も、さらにオイル価格までも刺激を受けるので注目されるからね。私たちの自動車業界にとっては、アメリカ市場は生命線だからね。
大内君
よく分かります。
山田課長
同じように景気の先行指数が、この「ISM製造業景気指数」なのだ、こちらも、結構曲者な統計なのだ、正式には、「Institute for Supply Management」で略して「ISM」だ。日本語では「全米供給管理協会(Institute for Supply Management)」と訳されているよ。2種類があって、製造業と非製造業とがある。どちらというと「ISM製造業景況指数」が重視されているようだ、しかし最近はサービス産業の比重が増しており、「ISM非製造業総合景況指数」の重要性も高まっているようだよ。どちらも、「50以上だと景気拡大」で、「50未満だと景気後退」、50が景気転換の分岐点だとされている。
大内君
どんな調査方法ですか?
山田課長
一言でいえば、「あなたの会社のいまの景気はどうですか?」と聞いたものだよ。現場の担当者は肌で敏感に感じているからね。約350社の製造企業の「購買担当役員」へアンケート調査をしているようだ。主なアンケート項目は、「生産」、「新規受注」、「雇用」、「在庫」などだよ。ある調査機関によれば、「ISM製造業・非製造業」と 「GDP成長率」の相関はとても強いといっている。だから先行指数でもあるのだよ。そしてポイントは、過去の利上げのタイミングを見ると、「ISM製造業景況指数」が50以上の時だったそうだよ。今年は世界的にも景気の悪い話ばかりだけど、まあ、「Tomorrow is another day」、焦らずに気楽にいこう。