いつも年末になると思うのは「一年は早い」、今年もいろいろとありました。イギリスがEU離脱だ、異端トランプが大統領かよ、世界一影響力があると評されたプーチン大統領が日本に来た、何かと騒がしい一年でした。歴史的な変化は株価です、株価は「上り坂」があれば「下り坂」もあるけど、今年は「まさか」、「まさか」があったのです。ニューヨークダウは、18000ドルから、あれよ、あれよと言う間に19000ドルを超えたのです。皮肉にも「トランプ政権」が誕生すれば「景気は良くなるとのシナリオで暴騰した」のです。クリスマス明けのNYダウ平均は、20000ドルに迫っています。「アノマリー(Anomaly)」的にも年始高への期待は高まります。下記は今年のニューヨークダウです。出所「ヤフーファイナンス」。
AMRI研究員の経済解説
山田課長
何かよく分からないけど、ドルが買われて、株価が暴騰し、債券が売られている。一部では投資の「パラダイム(paradigm)」が動きはじめたと評されているよ。「パラダイム」とは、お金の大移動が起きており、新興国から米国へという流れを指している。これは非常に大きな潮の流れであると思われ、当面、このトレンドは変わらない可能性がありそうだ。
大内君
トランプ誕生で「トランプラリー」と呼ばれていますが、なぜ株価は騰がったのですか、
山田課長
第20回でも話したけど「人間心理」と「投資行動は不可解」なものだ、なかなか人間の行動は読めない。今回も予想できなかった。今回はまず、債券利回りが上昇した、これによってドルが買われて「金」が売られると、大きく変動した、その波動が、銀行や保険会社の業績予想にも生じたのだ。トランプ勝利後は長期金利が特に大きく上昇し、短期債券利回りとのギャップである「イールドカーブ」が立つ形「スティープ(Steep)」となった。銀行などの金融機関は短期の金利で資金を調達し、長期で融資或いは運用して利鞘を稼ぐのが本業なので、イールドカーブの「スティープ化は銀行収益が改善する」と銀行株のラリーを生んだ。ゴールドマンサックス株はトランプ後だけで約30%上昇した。日本の東証銀行株指数も約40%もの上昇率となった。そこに、産油国の減産効果で原油価格が高止まりする結果、資源価格が上昇し、世界的にインフレ期待が高まったこともあった。これは世界の株式市場にポジティブに作用するとみられた。なぜなら、株式はインフレヘッジの主たる手段だからだ。
大内君
こんな「シナリオ」は誰も予想できませんでしたね。日本市場も急速に明るくなりました。
山田課長
期待通りドル高になるようなら、わが国輸出企業の採算が一段と改善し、日経平均株価のバリュエーションも一段と上昇する見通しだ。つまり、現時点では多くの投資家は明るい気分で年を越せそうだ。いまはドル円と日経平均指数が「パラレル (parallel)」に動いているからね。一部では、10年物国債利回りをゼロに維持する日銀の政策が少なくともあと2年続くとみられている。一方で米国は17年末までの間に最大4回利上げをしているので、10年債利回りは3%を超える公算があり、これが対円でのドル上昇を促す見込みだとされる。
大内君
ドル円と日経平均指数が「パラレル」に動いているのですか。このままドル高が続くといいですね。
山田課長
「保護主義的」な、トランプがこのまま円安誘導を許すのか疑問だ。トランプはまだ何も発言していない。しかし、円安がさらに進行すれば、為替操作国として日本が批判を受けるリスクが高まるかもしれないので要注意だ。
大内君
そうですよね。グローバルな「保護主義」の発生はいやですね。
山田課長
こんな「アノマリー」を言う人もいるよ。来年は2017年だが、末尾に「7」が付く年は、10年周期で金融危機が起こるという「アノマリー(Anomaly)」が囁かれているのだ。具体的には、1987年の「ブラックマンデー」、1997年の「アジア通貨危機・山一證券自主廃業」、2007年の「パリバショック(サブプライム問題顕在化)」です。もちろん、現時点では、2017年に、そのような金融危機が発生する兆候は確認できない。しかし地震は突然やってくる、トランプ次期大統領の発言や南シナ海での緊急事態の発生により、米中関係に緊張が走るケースが考えられるほか、世界各地で多発しているテロ行為が起き、いきなりマーケットを取り巻く環境が激変するリスクがあることは、常に、頭の片隅においておく必要があるよ。